病


わたしはいきている 或いはいきていない
その境界線上には赤い花が一輪さいている
りんりんとかなたにのびていく境界線 青空/
がすみわたった夏の朝の悪夢
わたしは汗をながしながらさむさにふるえている
「夏がやってきますね/はい、そうですね 保健室のカーテンのうらで、野良猫の目がゆれている/わたしの死んだ日
すさんだ目がゆれている コップは汗をながしている
太陽が涙をながしている
わたしはわたしを忘却している/
赤い花がさいている
猫は花をふみおっていく/ほそい茎から亡霊があふれだす
ゆらめいた夏のきおく、わたしは烏をおいかける (かえるあてはない)
うしなうことをくりかえす空の青
はらはらと ふりそそぐ硝子をたどり
道は入道雲のさきのほうへ/たましいは
かぜとともにきえうせる 
(こわれたエアコンのなかに うずくまるたましい
を わたしには すくえない/とうとうはてはみつからない
とうめいにかわっていくわたし
草葉はみずみずしく
わたしの目をうずめて


はてのうしなわれた夏のさかりに
赤い花はさいている


2013年4月

   

  
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