こうふく


わけもない叫びが
赤い花となって喉元からわきおこり、
そのとき私は死んでいる
たしかに、魂は眠りいり、
指先からはいっさいの脈動が失われている
その官能


狂人はかげろうのように
冬の天幕のうらがわに立ち尽くす
胸元にぽっかりとあいたまなざしが、むなしく
ここにない私をとがめる
ナイフが、ぎんいろが、痛みが、
足りないと嘆いたのは遠い昨日のようで、
今はただ宇宙が手のひらには ふってくる


真っ黒なだけの、わけのない塊
かれはきみの目のようだねと笑った
そのやさしさによろこびながら、私はこれは箱なのだよと答えた
切り刻まれた子どもの死体が
ぎゅうぎゅうに詰められている
しろく、あかく


私は今日も浮遊している


               2013.2.14

   

  
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