歩いていくということ



僕     ということが不慣れでたまらない
穴のあいた一日
赤い小道をたどる。
点、点 と
星座のつまったゴミ袋をたべる
猫は僕のうまれかわり


暮れなずむせきじつ
無骨な掌を
よりわせて 花をうむ
傷のついた種子
僕は私であるということが不慣れでたまらない


ドラム缶に 日はのぼる
僕は私ではないということが不慣れでたまらない
鉄錆のプランクトンの、
指先でふれればとうめいになるいのち
が  あわれでたまらない……


僕はほころびであるということが不慣れでたまらない
熱い風に
頬をさかれ
僕は、ここが秋であるということを思い知る
(むなしくながれおちる体液の僕……)
  を前にして棒立ちになっている、僕は


僕は


                  2013年10月 早稲田詩人31寄稿

   

  
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